PL対策の要点(製造物責任)

1.  PL法(製造物責任法)の基本ポイント

■ 制定の背景と目的

かつての民法では、製品に起因する事故で製造業者の責任を問うためには、被害者側が「製造業者に過失があったこと」を立証しなければなりませんでした。
しかし、一般消費者が企業側の過失を証明するのは非常に難しく、被害者救済が迅速に進まないという課題がありました。

そこで導入されたのが「PL法(製造物責任法)」です。
この法律では、被害者が「過失」ではなく「製品の欠陥」を立証できれば、製造業者に責任を追及できるようになりました。

被害者の立証要件
旧 民法709法(過失責任主義)
損害の発生
製造業者の過失
損害と過失の因果関係
現 PL法(欠陥責任主義)
損害の発生
製品の欠陥
損害と欠陥の因果関係

この法改正により、被害者保護のハードルは下がりましたが、その一方で製品事故のクレームは増加したといわれています。


■ PL法 第1条 ~ 目的

PL法は、欠陥製品によって人や財産に被害が生じた際の「被害者の保護」と「製造業者等の賠償責任の明確化」を目的としています。
さらに、こうした仕組みを通じて「国民生活の安定と向上に寄与する」ことが掲げられています。


■ PL法 第2条(定義)

製造物とは

「製造または加工された動産(不動産以外の有体物)」を指します。

そのため、未加工の農作物やサービスの提供などは対象外です。

  製造:   設計・加工・検査・表示などを含め、原材料から新しい製品を作り出す行為。

  加工:   素材に手を加え、性質を保ちながら新しい価値や特性を付与すること。

  動産:   土地や建物などの不動産を除くすべての有体物。


欠陥とは

「製品が通常有すべき安全性を欠いている状態」を指します。

単なる故障や不具合であっても、人の生命・身体・財産に危害を及ぼさない場合は、PL法上の『欠陥』には該当しません。

欠陥の有無を判断する際は、以下のような要素を総合的に考慮します。

  •   1. 製品の性質や用途
  •   2. 想定される使用方法・使用循環
  •   3. 製品を市場に出した時期の技術水準
  •   4. その他、製品に関する事情

これらの要素を踏まえ、実際の裁判では個別の事情に応じて判断されます。


■ PL法 第3条(製造業者の責任)

製造業者や輸入業者は、製品の欠陥により他人の生命・身体・財産に損害を与えた場合、その損害を賠償する責任を負います。

ただし、以下のいずれかに該当する場合は責任を免れることができます。

  •   1. 引き渡し時点で製品に欠陥がなかったことを証明できる場合
  •   2. 当時の科学・技術水準では欠陥を発見できなかった場合
  •   3. 他社の設計に基づいて製造したことが明らかである場合


2.  PL対策の重要性

PL法は、「安全な製品の提供による事故防止」と「被害発生時の迅速な救済」を目的としています。

したがって、製品を扱うすべての企業にとって、適切なPL対策の整備は必須です。

企業はまずPL法の趣旨を正しく理解し、安全性向上、事故発生時の対応体制(クレーム処理や報告体制など)、賠償能力(PL保険など)の確保を行う必要があります。

3.  企業におけるPL対策の構成

企業で行うPL対策は、総称して PLP(Product Liability Prevention:製造物責任予防対策) と呼ばれます。

PLPは大きく次の2つの要素で構成されます。

区分内容
PS(Product Safety)製品安全対策設計・製造・表示などの各段階で事故を未然に防ぐ対策
PLD(Product Liability Defense)防御・訴訟対策万一の事故発生時に、被害拡大を防ぎ適切に対応するための体制整備

PLP(製造物責任対策)構成図

PS: 製品安全対策

・設計段階での安全性確保

・製造工程での品質管理

・表示・警告ラベルの適正化


PLD: 防御・訴訟対策

・苦情・クレーム窓口の設置

・苦情情報の記録・管理

・設計・製造関連文書の保管体制整備

・法務・リスク管理部門の強化

・賠償資力の確保(PL保険の活用)


4.  PS(製品安全対策)の概要

PLP活動の中核を担うのが PS(Product Safety:製品安全対策) です。

目的は「安全性の確保された製品を市場に供給すること」にあります。

このため、企画・設計・製造・販売・廃棄に至るまで、製品ライフサイクル全体を通じた安全確保が求められます。

また、製品の安全性は企業側の設計・製造努力だけでなく、ユーザーによる正しい使用が前提となります。

そのため、「取扱説明書」や「警告ラベル」などによる情報提供は非常に重要です。 もしこれらの表示内容に不備があり、それが原因で事故が発生した場合、取扱説明書や警告表示も「製品の一部」とみなされ、欠陥判断の根拠とされることがあります。


製品における「欠陥」の種類

区分内容の概要
設計上の欠陥安全設計の不十分さ、安全基準不適合、部品選定の誤りなど
製造上の欠陥加工・組立・検査のミス、部品や材料の瑕疵など
表示・警告上の欠陥取扱説明書やラベルの不備、危険に関する情報不足や誤解を招く表示など

製品の設計や製造の段階で可能な限り安全性を確保しても、「取扱説明書」や「警告表示」などの情報面が不十分であれば、安全対策としては不完全です。

したがって、表示内容の正確性・明確性の確保も重要なPL対策の一部です。