TDの落とし穴
技術文書(TD)の注意点
TD (Technical Documentation/技術文書) はCEマーキング適合宣言に不可欠ですが、ただ作成しておくだけでは不十分です。 最も大切なのは、「EU内関連当局から求められた際すぐに開示/説明できること」です。 以下のポイントがよく見落とされがちであり、注意が必要です。
① 適合宣言後の保管
適合宣言後もTDを宣言の「技術的根拠」として保管し、適合宣言に至った詳細を説明できなければなりません。 EU内関連当局からの要請に対し、即座に対応できない場合(通常は48時間以内)は、「適切な対応ではない」と判断され、当局からペナルティを課せられることもあります。
② 設計変更への対応
設計内容を変更する場合はTDへもその変更内容を展開し、実際の製品とTDを常に同じ内容にしておく必要があります。 当局へ開示説明する為の適切な「技術的根拠」として、実際の製品とTDの内容とに食い違いがない様にしておくことが重要です。
③ 最新版指令・規格への継続的適合
指令や規格が改訂強制化された場合は、その最新版の要求事項への適合性を新たに証明しなければなりません。 旧版への対応のままでは、改訂日以降にEU圏内へ投入した製品は違法扱いとなり、罰則の対象となります。
④ 追加モデルのカバー
“一度代表機で試験し、適合宣言しているので…。” という安易な考えで、「TDでカバーされていないモデル」をEU圏内へ投入すると、そのモデルに対しては「適合宣言されていない」ということになります。 追加モデルの適合宣言には、一般的に、改めてテストを受ける方法と書類のみで適合性を証明する2つの方法があります。いずれの場合も、適切な手続き(TD内での網羅)が必要です。
⑤EU-AR(Authorized Representative in EU)によるTD保管
2021年7月16日の「市場監視新規制2019/1020 施行」に伴い、「EUARによるEU域内でのTD保管」が事実上強制化されました。 この規制への対応として、稀に以下のようなお話を日本の企業/メーカー様から耳にします。
「TDはEU内の “販売店” が保管している…」
「EUARは “現地ディーラー” に任せている…」
しかしながら、EUAR(TD保管者)に求められる基本的な責務は「CE宣言内容の妥当性判断」「CE宣言の技術的根拠を全て掌握する」であるため、上記の様な立場の方々ではその責務を全うできないことがほとんどです。 EUではTDの内容は勿論、その保管形態や企業方針までもが厳しく問われ始めており、上記規制はその詳細について厳格な定義を設けています。